大阪高等裁判所 昭和24年(を)1077号 判決 1949年6月13日
被告人
但田英三
主文
本件控訴を棄却する。
当審の訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
刑事訴訟法第三十六條は被告人が貧困その他の事由により弁護人を選任することが出來ぬときは、裁判所はその請求により弁護人を附すべきことを規定し、本件はまさにこれに則り原裁判所が弁護人を選任し弁護の労をとらせたものであるが、右弁護人に支給すべき同法第三十八條所定の報酬等が訴訟費用中に包含されることは刑事訴訟費用法第一條第三号にてらし一点疑がない。さらに、右刑事訴訟法第三十六條は弁護人を附することを命じているだけであつて、その報酬等まで当然國家が負担しなければならぬ根拠はすこしもないのみならず、かえつて、その費用の終局的負担者等に関しては同法第百八十一條第五百條等の規定がべつにあり、その間すこしも法的に矛盾するところはないから、原審の措置は相当であつて論旨は採用しがたい。
控訴趣意
第二点 訴訟費用(國選弁護人ニ対スル報酬)ノ申立人(被告)負担ノ件ニツキドウシテモ諒解出來マセン申立人ガ國選弁護人ヲ申請シタル事由ノ全部ハ貧困ニ依ルヲ理由トシテ申請シタモノデアリ裁判所モ亦其ノ理由ヲ正当ト認定シテノ上ニテ弁護人ヲツケラレタルモノト考ヘラレマスノニ裁判ノ結果五百円ノ負担ヲ命ゼラレマシタ他ノ理由ニ依ル訴訟費用ノ負担ハアリマセウガ貧困ニ依ル爲メト前提ノ上ニテツケタル國選弁護人ニ対スル報酬ヲ申立人(被告)負担トハナントシテモ納得ガ出來マセン刑事訴訟法第百八十一條ニハ訴訟費用ノ被告負担ノ字句ハアリマスガ弁護人(國選)ノ報酬ガ訴訟費用ノ中ニ含マル、ト云フ解釈ハドウシテモ出來マセン其ノ結果ハ檢察官ノ求刑ヨリ実質的ニ重イ刑ノ判決ガ下サレマシタ若シ此ノ事(貧困ニ依リツケタル國選弁護人ノ報酬ノ件)ガ此ノ儘ニ正当ト認メラルルナラバ法ノ知識ニ浅イ國民ノ大半ノ錯覚ヲ利シテ本來國家負担スベキ國選弁護人ノ報酬迄モ貧困ナル被告ニ負担サシ貧困ナルニ依リ附シタル理由ト相反スル法的矛盾ヲ來スモノト考ヘラレル。